最強ミックスフルーツ
母は突然死んだ。


「今日は体調が悪くて
林檎、保育園に送ってもらえる?」

朝、弁当をつくりながら
母が言った。


「いいよ、もちろん。」
私はその弁当を受け取って
ハンカチで包んでいた。


「ごめんね、遠回りさせて。
林檎には迷惑かけっぱなしね。」


「そんなことないよ。
おかあさん頑張ってくれてる。
うちも手伝わないと
罰があたるよ。」



母は私の手を握り締めた。


「林檎の笑顔にどれだけ
救われてきたことか。
辛い時苦しい時、林檎が
笑ってくれたら吹っ飛んだ。
林檎の笑顔には
大きな力があるのかもしれない。
どんなにつらいことがあっても
林檎は林檎らしく
明るく強く前をしっかり向いて。
おとうさんとおかあさんの
誇りだから、林檎の素敵さ。
チビたちにも林檎の背中を
見せながら成長してもらいたいわ。
よろしくね、おねーちゃん。」


母はいつものように
私に優しく語った。

何も変わらない・・・
いつもの母の言葉だった。

それが最後の言葉だった。
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