最強ミックスフルーツ
ふたりっきりになった部屋で
理輝が口を開いた。


「情けないだろ?
愛されてないこと知ってたんだ。
それでも春妃を失いたくなかった。
それがさ、踏み台だとしても
それで我慢してたつもりだったけど
とうさんを憎むことで
解放されていたのかもしれない。」



「うちは理輝しか見えないよ。」


理輝の細い腰を抱きしめる。


「真実は辛かったでしょ?
でも知らないとずっとおとうさんを
憎んで、疑って・・・・
自分を嫌いになって・・・・
春妃さんを想えば傷つき・・・・
理輝には楽しい過去も未来も見えないから」



「悪いな。
こんなこと聞いておまえだって
いい気もちしないだろ?」



「うちも必死だよ、
春妃さんに嫉妬してる・・・・
理輝にこんなに愛されたなんて
うらやましすぎる・・・・」
わざとおどけた。


「林檎・・・・・
辛かったけど、なんか
ふっきれた・・・・。
見ないようにしてたものと
向き合えるのは案外いい治療なのかもな。」



「理輝はいい子だね。」

私は背伸びして理輝の頭を撫ぜた。


「おまえといたら
元気になるよ。」
理輝が笑った。



「うちは最強なんだよ…
最強なんだから……」
その言葉を言い終えないうちに
抑えていた
感情が爆発した。
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