フラミンゴの壁
第8章
俺はとても自分の力で帰れるとは思えずタクシーを捉まえて自宅に帰ることにした。
住所を運転手に告げ、俺は目を閉じてさっき起こったことの全部を整理した。

俺からの手紙。
これが計三枚ある。
その中のふたつの内容は知っている。

魔導士と美しい男を捜せということだった。
それからさっきの郵便配達の男が語った内容は、明日のうちに危険が起こるということだった。

郵便配達の男もモアレのなかの男もしきりに「きっかけ」という言葉を使っていたな。
俺は目をあけて、後部座席の窓から雨にぬれる町並みを眺めていた。
そうなるとどこでモアレが発生してあの男がからかいに来るか分からないと思い俺は一人にしといてくれと訴えながら再び目を閉じた。

まずあの手紙が何なのかだ。

俺は自分で書いたことを覚えていない。

記憶にないだけで、忘れてしまっていることなのか?

偽装とは考えられるか?偽装だとしたら身内だ。
子どものとき俺は自分のことを「おる」と発音していた。
しかし、父も母もそんな自分の子どもに悪戯をするものだろうか?
それは考えられない。

もし自分の記憶がないのだとしても、次のつながりがわからない。

なぜ郵便配達の男が消えるんだ?

それもわざわざ俺の手紙を届けに来て目の前で・・・そんなことなんてありえない。

俺は目を見開いた。

「ありえないことが起こっている・・・」
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