フラミンゴの壁
「私は正直、落胆しているのです。私たちがあなたに賭けていた未来が揺らいでいるのです。それが私たちのこれまでの努力が損なわれたことを言っているのではありません。タロチャンとはやっぱり別人のようですね。ダナエが言ってました。」

「あぁ、さっきのことを聞いたのかい?それじぁ、それは真実だよ、あんたが観たとおりさ。あんた、あれだろっ有望の方の俺についてた女だろ。だけど俺は違う。これが日本のサラリーマンさ、スーパーマンみたいなヒーローになろうなんてこれっぽっちも考えてない。さっきあんたがタロチャンと俺のことを読んだか、この世界であんたの前にいるタロチャンはダロヂャンだよ。濁音にして読んで合うぐらいさ。」

目の前の女は大きな瞳のなかに涙をうるませていた。

「泣くなよ、このぐらいで。よく考えてみなよ、あんたたちが考えているこの災いだって自然現象のひとつかも知れない。だとしたら必然だろ。それを止めない俺だって、もしかしたら俺が引き出したことかもしれないぜ。そうしたら、あんたたちの打倒はこの俺だ。こうやって組み込まれて成立しているのが世界だろ。表は明るく繕えても、裏でどう関わり合いまた表裏がどう噛み合っているのかまで分かり切れないじゃないか。なすがまま、レット・イット・ビーだよ。現代でこれが終結のときならそうあるまでだよ。その覚悟は俺だけではないよ、きっとだれもがそんなことを考えているさ。」

「そうね、わたしもタロチャンと一緒に暮らしてこの世界の様子を知っているから、あなたがいうことは理解できるつもりよ。あなたはこれを裁きとでもいいたいんでしょうね。」

「あぁ、そうだね。」俺は返事をした。

返事をしたが妙に俺に親しみを感じている女に気持ちが苦しかった。

女は俺の部屋に落ちていた二枚目の手紙を拾い上げて俺に手渡した。
俺はうんざりした態度で女の手から手紙を受け取った。

「三枚のうち、はじめと三枚目の内容を知っている俺がいまさら二枚目を読んでなんになる。」

俺は文句をいいながら目を通した。
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