フラミンゴの壁
第4章
アパートに帰り、いつも通り12時間遅れの朝刊を郵便ポストから取り出した。
新聞を引き抜くとピンクチラシと不動産のチラシ、宗教の勧誘のチラシと一緒に手紙が落ちてきた。
それは昨日と同じ手紙だった。
また記憶にもない俺自身が差出人か。
封筒を指に挟んで裏返し、昨日と同じ位置に送り主である自分のサインを確認した。

「何を書くことがあったのか?」

今日は不思議に思った。
封を開ける前に俺は実家に電話した。
何度か鳴らすが母も父も電話に出ない。
こんな時間にもう寝ているのか?
それでも何かあったのか?
自分が子供のときにでも、何か学校の課題で未来の自分へと向けたタイムマシンのような手紙を書かされたのか聞いていておきたかったのに・・・。

俺という自身は過去に疎い。
俺の場合は過去や思い出を共有するような友達もいないから、自分で思い出を漁ることもなかったし、誰に語れることもなかった。
個人的経験とは一般の世界では睡眠時に見る夢と等しく、極めて低価値の類だと思っていた。
俺はたいした思い出を持っていない。いつもひとりでいた。
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