…すき。
脱走
脱走してから、色んな友達の家を泊まり歩いた。

人目を気にし、パトカーが通ると顔を隠し怯える毎日。

ある日、友達が連絡取れるようにと2つ持っていた携帯のうち1つを貸してくれた。

SoftBank。
彼の施設はみんなSoftBankだった。

彼と仲の良い男友達、あたしもよく相談していた。

男友達の番号を押す。

プププッ…プルルル…
ガチャッ…

《もしもし》

「もしもし?うち」

《っ…えっ?》

「児相、脱走しちゃった」

《まじでか。すげえな!!》

「あいつ…いる?」

《あぁ…呼んでもらうわ》

友達が他の人に彼を呼んでもらうように説得をしていた。

しばらくして…

《…もしもし》

「っっ…!!」

涙が出そうだった。

久しぶりに聞いたその声は、どこか遠慮してるような、申し訳なさそうな感じだった。

「…元気?」

《うん…。なんか、ごめん。俺のせいだよな》

「2人のせいだよ。お互い同意の上での行動だもん」

聞けば今、彼には好きな人がいると言う。

涙が出そうなのをこらえて

「じゃああんたは学園に残れるように頑張りなよっ!!」

そう言って電話を切った。

『失恋…かあ…ふはっ…』

まだ、心の中で期待はあったんだけどなあ…

そうして次の泊まり先を探した。
< 12 / 18 >

この作品をシェア

pagetop