優しい悪魔−マキコと和夫−
「どうしたの? 和夫。」
そう言いながらマキコは、ケータイを返すと、そっとコップを取り戻した。
トイレにいき、中味を流す。
ホッとして気がゆるみ、涙が出てきた。
(人は天使にも、悪魔にもなれないんだな……。)
一時、悪魔になっても、我に返った時に自分がした事に傷つき、苦しむ。
悪魔になっても、ブレーキをかけないと。
それが、自分のためなんだ。
マキコは、そう自分に言い聞かせた。