狐と兎
オルヒデはハルトの事を知っているのか、高熱でぐったりしているハルト向かって、

何かを呟きました。その言葉はキルシュには聞こえてはいませんでした。


「とりあえず、そこに寝かせようか……時にキルシュ」
「はい?」


今にも泣き出しそうな声のキルシュは、ハルトを降ろしお面を外しながら、

何かを言いかけているオルヒデに返事をしました。

するとオルヒデは小さく溜め息を吐きながらこう言いました。


「彼だってプライドがあるんだから、お姫様抱っこで連れてくるのはよそうか」
「……うん?」


キルシュはその言葉の意味を理解出来ないまま、理解したふりをしました。
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