狐と兎
ベッドに横たわるハルトの傍で、キルシュは心配そうに彼だけを見つめていました。

荒い息遣い、赤みを帯びた頬。見ていて痛々しく感じました。


「キルシュ、心配な気持ちも分かるけどちょっと外に行っていようか」
「でも……っ」
「診察が終わったらちゃんと呼ぶから。それまで辛抱してくれないか?」


やや厳しい口調でキルシュに外へ出ているよう命じるオルヒデ。

不安や心配で一杯になりつつも、キルシュは大人しく外へと出ました。

丁度その時間は休憩時間だったからなのか、

待合室にはキルシュ以外誰もいませんでした。

キルシュは診察室の扉にもたれかかり、三角座りでしゃがみました。

顔を膝にうずめ、ただオルヒデがやってくるまでその時間を過ごしました。

それは僅か数分であったでしょう。しかしキルシュにはその時間がひどく長く感じたのでした。
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