狐と兎
「うん、そうだよ」


キルシュの怒りの涙声とは正反対に、ハルトは普段通りに淡々とした、

まるで他人事のように返事をしました。それはキルシュの怒りと悲しみを増幅させてしまいました。

ハルトはそれを気にすることなく、巻いていた両方の包帯を取って見せました。

手首から手の甲にかけて1輪の花が左右両方に描かれていました。

その花はまだ完全に花開いてはいませんでした。


「この花が全部開いたら僕は死ぬ」
「何でそんなにあっさりしているの!?」
「それがこの生まれ持った呪いだから」


そういうハルトの声は何処か寂しさも含んでいるようでした。

しかしそれを感じ取る事の出来ないキルシュは更に言葉を投げました。
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