狐と兎
何があってもずっとただ適当に聞いているだけのようなハルト。

まともに聞いていないなら返事だって適当な筈なのに、この時だけはまともでした。

キルシュにはそう感じて聞こえたのでしょう。

再び涙を拭ってから、兎のように目を真っ赤にさせたキルシュはまた聞きました。


「本当に、解く方法はないの?」
「……ジジ様なら知っているかも。多分」


少し考えたのちにハルトはジジ様という人が知っているかも、という事を言いました。

キルシュは漸く聞きたかった返事を聞く事が出来ました。


「じゃあ、そのジジ様って人に会わせて!」


キルシュはハルトの胸倉を掴もうとする勢いでした。

ハルトはただ戸惑う事もなく、あっさりと“良いよ”と答えました。


「目が赤いと会ってくれないから、それをなんとかしてからね。明日かな?
明日死ぬなんて事は多分ないと思うから……うん」
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