狐と兎
興奮を抑えてキルシュはそう言いました。木陰の下で並んで座っていた2人。

風がふわりとざわつく中でハルトは隣に座っていたキルシュにもたれかかりました。

キルシュの方にはハルトの頭が乗るような形となり、

彼女の心臓の音は今までにないくらいに細かくリズムを刻んでいたでしょう。


「は、ハルト……!?」


間もなくしてハルトの寝息が聞こえだしました。

昨日は恐らく夜更かしでもしていたのでしょう。勿論キルシュにとっては人生初めての出来事です。


「こんな寝方しなくても良いのにな……」


そうポツリと呟けば、キルシュは眠るハルトを見ます。

そしてこうでもなければ言えない一言をハルトに投げかけます。


「ハルトも自分の事もっと話してくれれば良いのにな」


面を向かってしっかりという事は出来ない言葉でした。
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