狐と兎
歩き始めて数分。

先程と変わらずハルトが少し前に歩き、キルシュはそれから数歩後ろを歩いていました。

そんな2人には会話はありませんでした。カトラと言う人の事を聞こうにも、

まともにハルトが答えてくれるとは思えないとキルシュは思ったのでしょう。

次第に人通りの多い場所から遠ざかり、昨日キルシュが大泣きした森の付近にいました。

その事を思い出したキルシュはほんの少し頬を赤く染めました。


「この辺りに住んでいるの……?」
「ジジ様はね」


此処で初めて2人は会話をしました。その時キルシュは妙な想像をしました。

森の中に進んでいくハルトを見て、カトラと言う人が森の中で暮らしているという事は確かな事です。

キルシュにとって森の中に住む人は、何故か決まって超人だと思っていたようで、

余計にカトラという人物像を想像する事が出来なくなっていました。
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