狐と兎
「……此処だよ」


ハルトが歩みを止め、一点の方向を指さしました。その先には古びた小屋がありました。

木にはツタが張り巡らされている、いかにも怪しげな小屋でした。

キルシュはその小屋を見て本当に人が住んでいるのかと疑ってしまいました。

恐る恐るキルシュが近付く中でも、ハルトは立ち止まったまま決して動こうとはしませんでした。

しかし自分の事でいっぱいいっぱいであったキルシュは、それに気付く事はありません。


「あ、気を付けて。たまに……」
「……ひゃっ!?」


鈍い音を立ててキルシュは突然現れた穴へ落ちて行きました。


「落とし穴があるって言おうとしたんだけどな……だから落とし穴の有無を今見極めていたんだよ」


落とし穴はキルシュがすっぽりと収まる位の深さでした。

なのでキルシュは自力で這い上がってくると、真っ先に言いました。
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