狐と兎
「何で落とし穴!?　ていうか言うの遅すぎるって!」


と。まだ驚きを隠せないようで、表情はまだ怒りと驚きが混ざった妙なものでした。


「お、今回は見事にはまったのか……って、お前じゃなかったのかい」


キルシュが落ちた音を聞いたのか、小屋から1人の老人が現れました。

背後にいたその老人の存在を気配で察知したキルシュは、

恐ろしい老人を想像しながらも構え、そして振り向きました。

そこにいたのは、白髪で胸元くらいまであろう白ひげを生やした老人の姿がありました。

身につけている服はややぼろぼろで薄汚れていました。


「ジジ様、お久し振り。昨日は崖に登っていたんだね」
「ハルトは昔から勘だけは鋭いのう……」
「薄汚れているだけで崖登り!?　何でそうなるの?」


2人の分からない会話にキルシュは頭をこんがらがせてしまいました。
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