狐と兎
龍達に背中を向け、来た道を黙って歩くキルシュ。

去り際には龍達に強気な表情を見せたキルシュでしたが、

1歩、また1歩と歩くにつれて彼女は肩をふるわせました。

次第に彼女の歩いた道には雨粒のような跡が点々と地面にしみて行きました。

森の中腹辺りにある、魔物達が確実に現れないような湖のある場所へ移動しました。

アクアマリンのような色の湖は、

昇ったばかりの太陽の光を浴び、宝石のようにキラキラと輝きます。

しかしキルシュの心はその綺麗さとは正反対に、

真っ黒な靄のようなものがかかっているような悲しい物でした。

湖の近くでしゃがみこみ、キルシュは泣き続けました。

此処数日でキルシュは一体どれ位泣いたのかは分かりません。

それでも涙は尽きる事なく流れ出て行ったのでした。
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