狐と兎
落ち着きを取り戻した所で、キルシュは湖に映る自分の顔を見ました。

その酷い泣き顔を見て自分で自分を罵りたい気分になりました。

する自分の横に何か黒い塊が映っている事に気がつきました。

そっと横を見るとそこにはキルシュが助けた龍の赤ちゃんがいました。


「ついて来たの……!?」


その口には小さな小さな赤い木の実が加えられていました。

驚くキルシュにその木の実をパサリと置いた赤ちゃんは、

先程と同じようにキルシュの傍にぴったりとくっつきました。


「お前……お母さん達を裏切る事になっちゃうよ?　早く戻りなよ」


赤ちゃんはフルフルと小さく首を振りました。

そしてギィと鳴いて見せました。その目はまるでキルシュを心配しているようでした。
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