狐と兎
キルシュはふっと笑い、ハルトの疑問に答えました。


「それって、あたしに好きだって言っているの?」
「……多分」
「ははっ やっと振り向いてくれた」


キルシュはやっとハルトの本当の気持ちを聞けたと思いました。

しかし本当の恋人同士になれてもその時間はごく僅か。

ハルトの両手に刻まれた呪いの文様の花は、今すぐにでも咲きそうでした。


「もうすぐなのかな?」
「うん、きっと……あとちょっと……」


ハルトは今にも眠ってしまいそうでした。

眠ってしまえばもうキルシュには会う事はないでしょう。

その眠気を堪えてハルトはキルシュにどうしても言いたい一言を言いました。
< 86 / 96 >

この作品をシェア

pagetop