狐と兎
キルシュはお面を被ると、どんな大人にも負けない位の怪力を発揮します。

それを利用し絶対にお面なしでは抱える事の出来ないハルトを抱え、

猛スピードでとある場所へと向かいました。

その姿に里の人々も何事かとほぼ確実に視線を彼女に送っていました。


「た、たのもー!!」
「道場破り? それだったらキルシュ。来る場所間違えているよ」


キルシュがハルトを抱えてやって来たのは診療所でした。

そこで出迎えたのは見た目は20代後半にしか見えない、

キルシュと同じ群青色の髪が綺麗な眼鏡をかけた男の医者でした。


「違うっ! オルヒデ叔父さん大変なの! ハルトがっ! ハルトが……」


姪っ子の必死な訴えに、オルヒデと呼ばれた医者は彼女に抱えられたハルトを見ました。
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