愛(殺)さなくてはならない人
佑介の指先がピクピクとしながら私に差し出された。

救いを求めている訳ではなく私の佑介に対する愛を最後に確認したいのだろう…

私はその手を払いのけた。

『言ったでしょう!あなたは苦しみながら絶望の中死んでいくのよ』

佑介の手が力なく真っ赤なバスタブに沈んでゆっくりと見えなくなった。

佑介は目を閉じていたがその顔は悲しみと絶望に包まれていた。

瞼が奇妙に痙攣している。

そろそろお別れの時間だよ、佑介。



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