恋するレンズのむこう

『梓…』


カーテンを開けた瞬間、また心臓が止まるかと思った。


さっきまで寝ていた梓だけど
今は上半身を起こしている


ぼーっと何か一点を見ていた視線があたしにゆっくり向けられる


そして大きく目が見開かれた


『梓…』

ぐいっ


気付けば、あたしは梓に抱き締められてる


腕から伝わるぬくもりが懐かしく感じる


「有香…」


久しぶりに聞いた梓の声。


よく聞けば陸より低い声は震えている。


あたしは顔を上げると彼もあたしを見ていて


ゆっくり微笑んだ。


あたしが見たかった笑顔。

< 105 / 196 >

この作品をシェア

pagetop