恋するレンズのむこう
『梓…』
カーテンを開けた瞬間、また心臓が止まるかと思った。
さっきまで寝ていた梓だけど
今は上半身を起こしている
ぼーっと何か一点を見ていた視線があたしにゆっくり向けられる
そして大きく目が見開かれた
『梓…』
ぐいっ
気付けば、あたしは梓に抱き締められてる
腕から伝わるぬくもりが懐かしく感じる
「有香…」
久しぶりに聞いた梓の声。
よく聞けば陸より低い声は震えている。
あたしは顔を上げると彼もあたしを見ていて
ゆっくり微笑んだ。
あたしが見たかった笑顔。