恋するレンズのむこう
思わず、彼女の方に振り向いてしまった


「梓!あたし、有香だよ!?」


コイツ、有香って言うんだ・・・


初めて彼女の名前を知ってかなり嬉しかった。


でも、よく考えてみると有香は俺に「梓」と呼んだ。


ということはもしかして俺のこと梓って思っているのかな?


それが、ものすごく悔しくて


もやもやとした中に『普通、間違える?』とも思ったりしたけど


やっぱり俺を見上げるその目があまりにも愛しくて


潤んでいる目がまるで受験の日のあの強い姿勢とは全然違くて


余計に守りたい、と思ってしまった


それでも我慢して『・・・誰?』と自分でも驚くくらいに低く冷たい声を出した。


「あ・・ずさ・・・?」


傷ついた顔を見せる有香を尻目に歯を食いしばりながら背を向けた。


背中に当たる有香の視線が痛くてたまらなかった・・・
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