恋するレンズのむこう
『どうする?行く?』


俺の質問に即答で「行く!!」といってくれた有香が嬉しくて思わず素直に笑ってしまった。


これじゃ、喜んでるのバレバレかもしれないな。


まあ、いっか。


ちょうどそこで起きたらしい有香の友達に有香を送る、と告げて俺は有香の手を引いて電車を降りた。


さりげなく手をつないだつもりだけど内心ヤバイくらいドキドキしてる。


でも有香は全然嫌がったりもしなかったし、それが嬉しかった。


嬉しすぎてその手を離したくなくて。

ずっとつないでいたら有香が笑いながら「こんな風に手を繋がなくてもあたし大人だから大丈夫だよ?」と言ってきたけど俺は離さなかった。


今だけでも良い。


今、この瞬間だけ俺は有香の彼氏でいられる


もう少したったらこの手をつなぐ事さえ許されないんだ。


だって、有香は俺の彼女じゃないから。


俺の“兄貴の彼女”だから。


俺は有香をだましてるんだ。
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