恋するレンズのむこう
『じゃ、帰るわ』


「おー、またな」


梓の平然さにちょっと力が抜けたけどそこはこちらも平然を装って病室を後にした。


『はあ・・・』


病院を出ると自然と出てきたため息。


気がつくと肩の力がさっきよりも楽になっていた。


手にはすこし汗をかいている。


・・・俺、気づかないうちにいつのまにか梓といて緊張していたんだな。


ちょっと意外に思いながら俺は家への道を歩いた。


空を見上げると星がキラキラ光っていた。


・・あれ、もしかして冬の大三角形?


『冬の大三角形』なんて名前だけしか知らなくて実際はどんなものなのか分からなかったけど。


俺は三角形に並ぶ星を見て、ちょっと切なく思いながらもなんだか感動した。


有香や梓もこの空を見てたりして。


そしたらなんだか嬉しいかもな。






俺はかじかんだ指先にハァと息を吹きかけて手をポケットに突っ込み早足で家まで帰っていった。


もう、冬なんだな。



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