恋するレンズのむこう
「有香…」


梓は驚きと喜びが交ざった顔であたしを見て甘く呼んだ。


そしてあたしの腕を掴んで自分の方に引き寄せる。


トン


あたしの頭が梓の胸板に当たり、小さく音を立てる。


トク…トク…


梓の規則正しい鼓動があたしの体にも伝わる。


優しく、しっかりとした鼓動。


『梓…』


梓の存在がしっかりとここにあると感じる。


梓があたしの髪を優しく撫でて、前髪を上に上げた。


そして、


優しく暖かいキスをした。



ドキン



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