恋するレンズのむこう
『あっ・・・』


背中にあたる視線がどうしようもなく痛く感じて、あたしはサッと梓から体を離した。


「有香」


梓が悲しそうに顔を歪めてあたしを見てる。


『・・・』


何も言えずに、梓と視線を合せる事もできなかった。


ドキンドキン


緊張のせいか、胸の鼓動が高鳴った気がした。


ゆっくりと梓から少し後ずさり、体を陸がいる廊下の方に向けた。


ドキンドキン


胸の鼓動がますます高鳴る。


そこにいた陸の顔があたしの梓への気持ちを乱す。


・・・なんで


・・・なんで



・・・なんでそんな顔をするの?



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