恋するレンズのむこう
陸への想いはすぐに消せるはず。


会ったりしなければまたすぐ忘れて梓をたくさん純粋に愛する事ができる。


そう思ってたんだ。


でも、実際は陸と会えなかった時でさえも陸を想って、陸への想いが膨らんでいるんだ。


そんなことを考えながら陸を見ていた。


陸、髪、伸びたね


そんな些細な事で心はいっぱいになってしまう。


陸は梓のベッドの横のテーブルにりんごを置いてあたしの横を通り過ぎた。


フッ


何かが細い糸のようなものが切れたような音。


そのとたん、目頭が熱くなって頬にはあふれるくらいの涙が流れていた。


「・・・有香?」


梓がいま、すぐ目の前にいるのに。

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