恋するレンズのむこう
ただ、目の前にいる陸の目を見つめるだけ。


「…なんで?」


陸が口を開いた。
その声は静かな病院の廊下に響いてあたしは戸惑う。


…なんで?


…わからない


「梓は…良いのかよ」


何も答えられなかった。

「お前は梓が好きなんだろ?」



ドクン


一気に息が乱れる。


今の自分の状況をやっと把握できた気がした。


あたし、何で陸を追いかけたの?


梓が呼んでいたのに


「梓が好きならこんな事すんなよ」


そう言って陸はあたしから逃げるように歩き出した。


『あっ』

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