恋するレンズのむこう
バンッと梓が壁を叩く音が大きく響いた。


「…有香、お前は陸と何してたんだよ?」


恐ろしく低い声があたしにかけられる。


『あ…』


「とにかく病室戻れよ」

あたしの横で陸が冷静なまま話す。


そして、梓に近付いた。

梓の肩に手を置いた時だった。


梓はその手を払って、そのまま陸の顔に拳を叩き付ける。


『陸っ…!!!』


鈍い音がして陸が廊下の壁に寄り掛かる。


チラリと見えた陸の口元は赤く光り、それを見たあたしは恐怖に襲われた。


梓は陸をにらんでいた。


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