恋するレンズのむこう
『あっ!ごめん、あたしもう帰るね!』


慌てて自分の鞄をつかみ、梓の病室を後にした。


帰りの電車、あたしはそっと自分の鞄を開けた。


鞄の中からは黄色いラッピング袋に包まれたもの。


・・昨日、梓のチョコと一緒につくったもの。


バレンタインデーのチョコレート。


義理チョコなのか、本命チョコなのか分からなかった。


でも、どうしても陸に渡したかった。


結局渡せなかったけどね―・・・




ため息をついてチョコレートを鞄にしまった。


電車の車窓から見える景色をただぼーっと眺めた。





< 174 / 196 >

この作品をシェア

pagetop