恋するレンズのむこう
―――


病院を出て、駅の近くまで小走りで来た。
おかげで息がすこし苦しい。


でもどこか心が軽くなった気がしたんだ。


その時だった

ふと向けた視線の先に、陸がいた。


『・・・え?』


一瞬ドキリとしたけどよく見るとそれはビルに張ってある大きなポスター。


陸が出てるCMのポスターらしい。


カッコイイな・・・

こんな人と話した事あるってだけですごいことなんだろうな・・・


そう思って視線をふと横にずらすと・・・

そこには陸にも負けないくらい人気の女のモデルがポーズをとっていた。


陸も女の人もお互い愛しそうにみつめあってる。


・・なんだかカップルみたいだな。

本当にこんな美形カップルいたら、いろいろと大変だろうな。


・・・そういえば、陸って好きな人いるのかな。


ふと頭の中にポンと出てきたその疑問。


そういえば、あたし陸の事あまり知らないかもしれない。


陸が何を好きで何が嫌いなのか、悩んでいたりしないか、何が得意か不得意か・・・


今まで陸を梓だと思っていたから本当に何も知らないんだ。




そう思うと同時にもうひとつの感情が大きくふくらんだ。



・・・陸に会いたいな。

会って話したいな。
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