恋するレンズのむこう
「有香・・・大丈夫?」

話し終わったあと凛が心配そうにあたしの顔を覗き込んだ頃にはすでにあたしは泣いていた。


『・・・大丈夫・・ではないかも』


へへ、と笑いながら流れた涙を拭う。

凛はやるせないといった顔をしてあたしを見ていた。


その時、ポケットの中の携帯から音楽が流れた。


『・・・あ』


梓だ。
梓からの着信。


メールの返信がなくて心配する梓の顔が目に浮かぶけどあたしはその電話には出なかった。


・・・出ちゃいけない。

ここで出たらあたしは戻れなくなるから。


梓と陸を傷つけてしまうから。


「いいの?」


『うん・・・』


「・・・でもねっ、有香っ」


「授業、始めるぞ~」


凛が何かを言いかけたけど教室に入ってきた先生の声に遮られ、凛は何か言いたげな顔で自分の席に帰っていった。


凛・・・ごめんね。
心配かけて。


あたしは去っていく凛の背中に向けて心の中で小さくそう呟いた。
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