恋するレンズのむこう
今度は彼はあたしの存在がなかったように横切ってそのまま歩いていった。


あたしはその場で立ち尽くしたまま。


何・・・?

今のは梓なの?


あたしの体からすべての力が吸い取られたように。

今でも、その場に倒れそうな気分だった。


そんな状況で帰るのはキツい。


学校の近くにあった公園のベンチで少しの間、休もうと思った。


ベンチに座ると、何かが解けたように涙が溢れ出た。


梓・・


あなたにとってあたしは1年で忘れてしまうような存在だったのですか?


じゃあ、なぜあの時あんなに強くあたしを抱きしめたの・・・?


分からない。

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