恋するレンズのむこう
また誰かに腕を引っ張られたと思うとあたしはその人に抱きしめられていた。


『・・梓・・・でしょう?』


あたしはその人の背中に手を回した。


涙がどんどん溢れ出る。


「・・・」


その人は何も話してはくれなかった。


『梓・・・!梓!!!』


涙で目がかすんでその人の顔は見えない。


「ゆ・・・か」


ぎこちない口調であたしの名前を呼ぶ、その声はどこかで聞いたことある声だった。


でも、さっきまでの恐怖でいっぱいだった頭がその声が誰の声か考える事はできなかった。


懐かしい腕から伝わるこの熱。


そして、その腕の力がますます強くなってあたしを抱きしめていた。



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