恋するレンズのむこう
温かい、優しい、甘い・・・


あの日の海での梓のまま。



気がつくと時計は7時を指していた。


もう真っ暗になった秋の夜の道をあたしは梓と一緒に歩いた。


駅までの道はただでさえ短い道のりなのにその日はずっともっと短く感じた。


でも、あたしの右隣にいる存在が本当に嬉しくて愛しく感じた。


「・・じゃあ」


気がつけば、もう駅の前にいた。


本当はまだずっと一緒にいたいよ。


振り返ると彼はあの日の笑顔であたしを見てくれていた。


その笑顔にあたしも返して切符売り場で切符を買った。


でも、今振り返ったらもうあの愛しい存在はあたしに背中を向けて歩いてるんじゃないかって不安に襲われた。


不安でいっぱいな気持ちで振り返る。

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