恋するレンズのむこう
あたしは、どちらかというと明るい人が好きだから。


ただでさえ人見知りであまり喋らないのに、相手も喋らないと静かな空気が広がっちゃうから。


そういう空気とか状況はあんまり好きじゃない。


梓はいつも窓に近い端っこの席に座っていた。


あたしはそことは正反対の廊下に近い端っこの席に座る。


だから、梓とは特に話すことなくしばらくは過ごしていた。




『うっ・・・高い』


参考にしたい本が高いところに置いてあってなかなか手が届かなかったとき。


ふわっ


急に甘い香りが漂ったかと思うと、あたしの横から腕が伸びてきてその本を取っていった。


振り返ると、・・・梓だった。


『あ、ありがとうございます・・・』


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