恋するレンズのむこう
『…っ』


気が付けば長い間あたしと先輩は唇を重ねていた。


誰もいないはずなのに


唇が離れた頃にはあたしの顔は火照りそうで


『あ、梓先…』


また唇を重ねられる。


でも今度は短いキス。


「“先輩”つけないで、梓って呼んで?」


甘い声。


いつもは見下ろすくせに今日は上目遣いで。


『梓…』


「ん?」


『…あたしも、梓のこと好き…大好き』


言いながら照れてしまう。


でも梓は愛しく笑ってくれた。


あたしが惚れた、優しいあの笑顔で。



本当に好きだったよ



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