恋するレンズのむこう
さっきまで感動していた魚があたしの近くを泳いでいても


あたしにはそれを見る余裕すらなくなっていた。


『あ…梓?!』


あたしは半分泣き顔で名前を呼びながら歩き出した。



ぐいっ


『!』


急に腕を掴まれて驚く。

そっと振り向くと…


『…あ…ずさ!』


あたしは溜め込んでいた気持ちが溢れ出て


思わず梓に抱き付いていた。


最初は驚いていた梓もすぐにあたしの背中を優しく擦ってくれる。


落ち着いたので体を離すと一気に今の状況で恥ずかしくなる。


暗くて良かったけど

一応周りには他の家族連れやカップル達がたくさんいた。
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