恋するレンズのむこう
白いベッドに静かに規則正しい寝息をして眠っている人。
窓からはさっきよりも濃いオレンジ色の光がその人の横顔にも差す。
綺麗な横顔。
『…梓?』
あたしが名前を呼んでもピクリとも動かない彼。
まるで眠っているようなのに…
彼の手には点滴が打たれている。
あたしはカーテンを掴んだままその場に立ち尽くした。
『梓…』
今度はさっきよりも大きく呼んだ。
「…ん…」
梓の瞼が少しだけ動く。
そして…
「…有…香」
今にも消えそうな声で名前を呼ばれ、胸が高鳴る。