恋するレンズのむこう
真実
***
ヒュウ、と優しく爽やかな風があたしを撫でてく。
梓に連れてこられたのは病院のすぐ隣の公園。
近いだけあってたくさんの患者さんらしき人がいた。
公園の横には大きな川が流れてて、その川にも夕日の光が差していた。
少し、肌寒く感じる。
…まるであの日の海みたい。
梓とあたしは公園のベンチに腰を降ろした。
静かに流れる川のように時間がゆっくり過ぎて行く。
「有香」
いきなり名前を呼ばれて慌てて梓を見る。
「ごめん、黙ってて…」
悲しそうな横顔があたしの心を締め付ける。