恋するレンズのむこう
ぎゅっ
気がつくとあたしの視界は真っ暗だった。
あたしの髪の毛には陸の吐息がかかる。
あたしの背中には腕が回っていて力強く抱き締められる。
『…陸』
陸があたしを抱き締めていた。
「有香…」
あたしの名前を呼ぶ陸の声は小さかった。
『陸…』
「泣けよ…」
優しく、どこか切なげに言う陸。
その優しさにあたしの目頭は熱くなる。
陸の腕は力強くて、優しくて、暖かかった。
そんな陸の胸はなんだか安心できて、あたしはその中で思い切り涙を流した。