六畳一間の魔法使い
ネットの小説サイトに出会った一年前。

私もちょうどその頃、彼に出会った。

『将来は作家夫人になるんで、お前』

あの頃は常々そう言ってたっけ。

今では冗談でもその事を口にすると怒る。

自分の書いた作品が読まれないのが、よっぽど悔しいらしい。

世間は広い。

小説を書くなんてマイナーなように思える趣味の人間がゴマンといる事。

自分は溢れるほどの才能を持って生まれた人間だなどという思い込みが赤面してしまうほどの勘違いだった事。

彼はこのサイトで二つの事を学んだ。


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