六畳一間の魔法使い
「何が気に入らんのんなぁ!猫も杓子も恋愛小説ばっかり読みやがって!」

まくし立てる彼の言葉は広島弁。

正確には『広島と岡山のハイブリット言語』。

彼が生まれた街の言葉らしい。

「あら、恋愛小説を馬鹿にしてもらったら困るわ?一番読者がとっつきやすいジャンルだと思うけど?身近な出来事だしね」

ベッドにもたれ掛かり、私は雑誌に目を通しながら返事した。

あんまり正論を言って彼を怒らせてはいけない。

かといって無視もいけない。

適度に相手をしてあしらう。

私がこの一年で覚えた、彼の扱い方だった。

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