With Love
小学生時代
魁翔が、春休み中に時間をみつけては、いろんな所に連れていってくれたから、学区内の事は一通り覚えられた。
ママよりも早く物知りになれて、得意げになって喜んでいたっけ。
だけど…、
引っ越してきたばかりのあたしには、幼稚園からのお友達なんて一人もいなくて、入学式当日は、
隣の席の子とですら、
一言も会話しないままに過ぎてしまった。
分断登校が始まった日から、毎朝迎えに来てくれる魁翔。
二人並んで歩いて、集合場所に向かっていると…、
「お兄ちゃんと一緒に学校行けて、嬉しいねぇ〜」
って、庭先を掃いてるおばあちゃんに言われたんだよね。
否定もしないで、笑顔で「いってきま〜す。」って挨拶する魁翔を横で見ていたあたしだけど、
すごく嬉しかったんだ。
独りっ子のあたしは、魁翔のような優しいお兄ちゃんに憧れていたから…。