危なくて…でも甘い放課後
『6年前…だったかな。たまたま弟が来ていて、俺はそれに気付かず酔って女房に八つ当たりしていたら弟にぶん殴られた』




『…』




『柔道5段の弟に殴られて酔いは醒めた。驚きと怒りに満ちた弟と、首から血を流して倒れている女房、そしてふすまを少し開けて涙目でこっちを見ている瑞希』




武田警視正のいかつい顔に逢わず眼尻には涙がたまっていた




『というような話を弟に後日談として聞かされた。実は俺自身あんまり覚えていない。だから弟に聞かされた時は動揺したな』




『…』




『でも俺の暴挙はまだ続いたみたいだ。ストレスは家族に当たっても当たっても発散されない。だからエスカレートしていく…』




涙は眼尻から横に流れていった




『ついには離婚をしてしまった。もちろん親権は女房に明け渡した』




『瑞希はそれで幸せになれたんですか?』




『ん?』




『いや、単純に訊いているだけです…』




『幸せになれたみたいだ。俺みたいな暴漢から逃れられて。まあ一時期らしいが』




『何かあったんですか?』




『女房、つまり瑞希の母親が死んだ』
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