* 翼をください * ー俺様柏原の不器用Loveー
「これはどういう事だ!」
柏原の声が、怒りに震えているのが分かる。
思いがけない柏原の登場に、顔面蒼白になる綾香を、柏原はキッと睨みつけた。
「おい!一年坊主!お前この状況が分かってんのか?そっちは1人で、こっちは4人プラス人質が1人だ。
生意気にいきがってんじゃねえよ!」
綾香の兄が、ものすごい剣幕でまくし立てた。
私の側にいた仲間の1人の男が、ポケットから取り出した折りたたみナイフを、私の首筋に突き立てる。
首筋に当たる冷たい感触に、思わず身構え、ゴクリと音を立てて、生唾を飲み込んだ。
無理だよ、柏原・・・。
その男の言うとおりだよ。
あんた、やられちゃうよ?
逃げて、お願い。
「―私なら大丈夫。あんたは逃げて。」
突き立てられたナイフへの恐怖から、震える声で言った。