* 翼をください * ー俺様柏原の不器用Loveー
柏原は、すぐさま私の元へ走ってきた。
心配そうな顔で、私の頬に触れる。
その手が、少し震えているのが分かった。
柏原の心配が、肌を通して伝わってくる。
止まっていた涙が、また頬を伝って零れ落ちた。
「震えてる・・・、もう大丈夫だからな。
血が出てるな、大丈夫か?」
柏原は、制服の上着を脱いで優しく私の肩にかけ、自分の胸に私の頭を引き寄せた。
「うっ、うっ、うわぁん。」
もう、ギリギリの状態だった私は、力強い柏原の腕の力に安心して、堰を切ったように泣いた。
柏原はそんな私を、子供をあやすように、優しいリズムで背中を叩く。
気持ちが落ち着いていく中で、記憶の糸を辿った。
いつだったか、こんな事があった・・・。
そうあれは、この学校に入学した日の放課後。
あの時もこうして、優しく抱きしめていてくれたっけ・・・。
あんたの優しさは、分かりづらいよ?・・・柏原。