* 翼をください * ー俺様柏原の不器用Loveー
何も言わずにいる私を見て呆れたように、でも、少し優しい顔で微笑むと、綾香は続けた。
「悔しいけど、もう無理なんだって分かったわ。
私達の事まで気に掛けて下さって・・・。あんな柏原様、初めて見た。あなたに出会って、柏原様は変わられた。悔しいけど、私にはそんな力、無いもの。
それに、誇り高いあのお方が、あなたの為に頭を下げる姿を見て、やっと諦めがついたから。」
そう言って、少し淋しげに綾香は笑った。
「誇り高いって・・・、ただの我が儘プリンスでしょ。」
少しくすぐったくて、本当は感動してるくせに、やっぱり素直になれない、ひねくれプリンセス。
・・・ってオイ!どさくさに紛れて、王子つながりで自分の事プリンセスとか言ってるし!
ただの、貧乏女子高生やないか~い!
「あのお方は、王子ではあるけど、決してわがままなんかではありませんわ。とても優しい心を持った、王子の中の王子なの。
今回の事だって、あなたに謝罪するつもりがあるなら、お昼休みにしてやってくれっておっしゃったのは、柏原様なのよ。」
―え?
「多分あなたの頭では、理解できないでしょうから説明するけど、あんな事があったなんて、他の人に聞かれないようにという配慮だと思うの。
柏原様は、あなたがいつも、お昼休みに一人でいる事を知っていらしたから。」