* 翼をください * ー俺様柏原の不器用Loveー
―こっちを見ないで・・・、私に気付かないで・・・、お願い。
隠れようにも、金縛りにあったようにその場を動けない私は、切実にそう願った。
男が電話を終え、胸ポケットから手帳を取り出して、何かを記入している。
―お願い、早くここから居なくなって。
願いが通じたのか、手帳を胸の内ポケットにしまい、スーツケースに手をかけた。
―よかった・・・、早く消えて。
その時・・・。
「おい!俺様を置いて、勝手に居なくなるって、どういう事だよ!」
声のする方に目だけ向けると、タイミング最悪な俺様柏原が、大声で怒鳴りながら偉そうに歩いてくるのが見えた。
ドクン、ドクン・・・
心臓が、スピードを上げて動き出す。
お願い、居なくなっていて!