* 翼をください * ー俺様柏原の不器用Loveー
願いも虚しく、あの男のいた方に目を戻すと、困惑気味な表情を浮かべて、こちらを見ていた。
「おい!聞いてるのか!」
非常事態な私の事なんか、お構いなしに噛みついてくる柏原の相手など出来る筈もなく、
泳ぐ私の視線の先にいるあの男が、戸惑いながらゆっくりと歩み寄ってきた。
「サラ・・・、なのか?」
何度も聞いたこの声に、私の心臓は益々激しく鳴り動く。
ガタガタと震えだすのを、必死に押さえるように、左腕を右手で強く掴んだ。
「誰だよ、おっさん。」
痺れを切らした柏原が、父に詰め寄る。
動揺しているのか、柏原の存在を気にする事無く、じっと私だけを見つめながら、父が口を開いた。
「元気にしていたか?心配していたんだ。ずっと会いたくて仕方がなかった。」
何も話さない私に、父は話を続けた。
「お前と母さんが出て行ったあと、ずいぶん探し回ったんだ。本当に申し訳ない事をしたと、悔やんでも悔やみきれなかった。
どうかしていたんだ。自分の娘にあんな事・・・。」
「やめて!!」
やっと出た私の声は、悲鳴に近い声だった。